認知症対策の他にもメリットの豊富な家族信託の特徴と手続き方法

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たくさんの遺産を抱えた親が、将来的な管理や自身が亡くなった後の相続に関して不安を抱いている時、家族信託という制度を活用して問題解決を図る事例が近年増え始めています。

非常に柔軟性の高いこの仕組みは、さまざまなテレビ番組などでも紹介されています。

またそのメリットは遺言書以上に幅広いとも言われていますので、これから相続や財産管理に向けた話し合いをするご家族にとって、家族信託の利用は意外な好循環をもたらすこともあると言えそうです。

今回は、初めて家族信託というキーワードを目にする皆さんと一緒に、その基礎知識を詳しく確認していきます。

家族信託とは何ですか?

遺産を持つ人が自分の老後や介護に必要なお金の管理や給付を受ける時、保有している預貯金や不動産などを信頼できる家族に託し、処分や管理を全て任せる財産管理の方法です。

NHKの認知症対策コーナーなどでも多く紹介される家族信託は、比較的新しい制度となっています。

また非相続人が親族や家族に遺産管理を託するこの制度には、高額報酬が発生しない特徴もありますので、一般の皆さんでも気軽に利用可能な仕組みと捉えて良いでしょう。

家族信託における基本的な仕組みとは?

家族信託には、遺言制度や後見制度に代える形や、遺言書や後見制度と併せて利用することにより、被相続人自身の希望に総形で継承や管理のできる仕組みがあります。

とは言え、法律の専門家の間でも浸透し始めたばかりとなるこの制度には、一般家庭では認知されているとは言い難い現状があります。

しかし高齢化社会へと進む日本では、お年寄りの財産管理や相続手続きにおける問題を解消するために家族信託のメリットが注目され始めているようです。

そもそも、信託って何ですか?

信託という言葉に対して、一般の皆さんは投資信託や年金信託といった金融商品を思い浮かべることかと思います。

こうしたシーンにおける受託者は、信託業法の登録や免許を受けた信託会社や信託銀行しかなれない仕組みとなっています。

しかしこれらの会社は基本的に個人の自宅を信託財産として受託することができないため、近年では家族信託のニーズに応えられないところが大きな問題となっていたのです。

そこで生まれた家族信託という制度には、「親戚や家族といった信頼できる知人に受託者になってもらう」というさまざまなメリットに繋がる基本的な考え方があります。

「受託者=家族」となる家族信託の場合、登場人物は委託者・受益者・受託者の3人です。

場合によっては信託管理人や受益者管理人が加わることもありますが、それでも家族が受託者になる仕組みということで、一般の皆さんでも理解しやすいシステムになっていると言えそうです。

家族信託を行うメリット

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今話題の家族信託は、下記のとおり幅広いシーンでメリットのある制度です。

後見制度に変わる柔軟性の高い財産管理ができる

多くの人が利用する成年後見制度には、利用者側の制約や負担が案外多く、生前贈与などの相続税対策や財産の積極的な活用のできない難点があります。

また成年後見人には本人の判断能力が衰える段階までは財産管理ができない実態がありますが、これに対して家族信託なら判断能力のあるうちから自分のお願いしたい人に財産管理を託せるのです。

そのため、被相続人が元気なうちに資産の処分や管理を家族に託せるといた意味でも、成年後見制度と比べて利用のしやすい存在となるでしょう。

また万が一本人が判断能力を失ってしまった場合においても、本人の意向に沿った形でスムーズな財産管理の移行ができるシステムです。

親の財産管理が容易になる

高齢になってしまった親の財産管理についても、家族信託の利用によって容易に行えるようになります。

例えば、まだ元気な父親が長男に財産の名義変更を行いたい、自分のために財産を活用して欲しいと願うケースでは、被相続人の父親が受益者兼委託者、長男を受託者とすることで安心して老後の資産管理を任せられる形となるのです。

また父親が元気なうちにこうした仕組みを整えておくと、贈与税の控除をしながら長男に管理券を移すことができたり、状況に応じた形で最適な契約ができるといったさまざまな部分で親子の双方にメリットが生まれるそうです。

遺言書ではできないレベルのことが可能

家族信託には、遺言書の代わりとして活用できる効力も備わっています。

法律知識を持たない一般の皆さんが遺言書を残そうと思った場合、厳格な作成ルールにより面倒臭いといった想いが強まる実態があります。

これに対して委託者と受託者の間で契約を行う家族信託を選択すれば、自筆証書遺言などの方式に従う必要がなくなるのです。

また自分の亡くなった後に発生した相続に関して、財産を継承する者を指定できないといった制限もありませんので、遺言書作成に対してその必要性や億劫さの狭間で悩んでいる皆さんにも、家族信託を利用するメリットは大きいと言えそうです。

財産継承における順位付けが可能

家族信託では、相続手続きにおける相続順位の順番付けもできる仕組みです。

一般的な相続対策において遺言書利用や生前贈与をすれば、順番付けが可能になることが多いです。

これに対して遺贈をした財産については、その次の相続人を指定できない難点があるのです。

こうした問題を解消できる家族信託を使えば、当初指定した受益者が万が一亡くなってしまった時においても、次の受益者を誰にするかなどの指定が柔軟にできる形となります。

倒産隔離機能

倒産隔離機能を有する家族信託は、将来的に万が一の問題があった時の備えになるメリットもあります。

倒産隔離機能とは、信託財産の名義が委託者ではなく受託者になることで、委託者が倒産した場合などの影響を受けないシステムです。

そのため、将来的に委託者や受託者が信託財産とは無関係な部分で多額の借金などを負ってしまった場合においても、信託財産の差し押さえは起こらない形となります。

二次相続の指定

二次相続を想定した相続対策といった意味でも、家族信託は大変有効です。

一般の皆さんが多く利用する遺言書の場合、遺言者となる被相続人が亡くなった場合の一次相続方法についてのみ指定が可能になる仕組みとなっています。

これに対して連続信託の仕組みも作れる家族信託を行っておけば、被相続人の財産を受け継ぐ長男が亡くなってしまった場合においても、「次の受益者を誰にするか?」といった部分でトラブルが生まれにくくなるのです。

また個々の家族や相続人、被相続人の意向に応じた仕組みの作成できる家族信託は、遺言書と比べて遥かに自由度の高いシステムと言えそうです。

家族信託のデメリット

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幅広いシーンで活用できる家族信託にも、下記のように場合によってはデメリットと感じられる側面もあるようです。

遺言や成年後見でないとできないこともある

成年後見制度には、民法で定める身上配慮義務により本人の身上監護や財産管理を念頭にできるメリットがあります。

これに対して財産の処分や管理がメインとなる家族信託の場合、法定代理人となる成年後見人ほどの適切な身上監護ができないケースもでてくるようです。

受託者を誰にするかで揉めるリスク

この制度を利用する際には、財産の適切な処分や管理を任せられる信頼できる家族がいることが大事な要件となります。

また被相続人がまだ元気であるのに自分の財産が自分名義ではなくなってしまう点に、強い抵抗感を持つことで家族信託の契約がスムーズに進まないこともあるようです。

こうした理由により家族信託を行う前に何らかの不信感が家族に生じた場合は、そこからさまざまな相続対策や節税対策などが進まなくなることもあるため、注意が必要です。

また受託者を誰にするかで揉めるリスクを防ぐためには、被相続人・相続人ともに普段からきちんとコミュニケーションを図り関係を良くしておく心掛けも必要となるでしょう。

節税効果はそう高くない

財産の管理や処分を円滑にすることを主目的とする家族信託には、高い節税効果はあるわけではありません。

また財産を取得したわけでもない受益者の皆さんは、みなし相続財産と判断されてしまいますので、税金的な視点からこの契約を分析すると負担が意外と大きくなる可能性もあると捉えた方が良いでしょう。

もし節税面でのメリットも期待するなら、相続税に詳しい法律の専門家に相談をしておいた方が良さそうです。

遺留分減殺請求の対象となるリスク

家族信託では、被相続人の死亡後に残った財産の継承者をしていできます。

しかしその財産が遺留分減殺請求対象となった場合、法定相続人の間で相続問題が生じる可能性がでてくるため、注意が必要です。

ちなみに家族信託と遺留分減殺請求の問題は、専門家によって意見が別れる実態がありますので、減殺請求のリスクが少しでもある場合は他の相続人との話し合いなどを慎重に進めた方が良いと言えそうです。

家族信託でわからない点がある場合は?

メリット・デメリットともに多い家族信託は、自分たち家族に適した制度なのかをしっかり確認した上で、慎重に契約内容を決めるべきと言えます。

また委託者と受託者の間で決定した内容については、きちんと契約書に記載する必要も出てきますので、信託契約や相続関連の知識のない皆さんにとっては少しハードルが高い部分もあると言えるでしょう。

テレビなどを見て関心を持っている家族信託について手続きの進め方などでわからないことがある場合は、相続関連の問題解決実績の豊富な弁護士に相談をしてみてください。

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