相続権を譲る相続分譲渡の具体的な手続き、流れ、注意点

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被相続人の死去に伴い相続トラブルに巻き込まれたくないと感じる法定相続人の中には、相続分譲渡という方法を使って他の遺族との争いから逃れる方々も見受けられます。

またそれなりに経済的余裕があり、亡くなった親などの財産にこだわる必要のない人達の中にも、相続分譲渡という選択をするケースが少なくない実態があるようです。

今回は、相続分譲渡の具体的な手続きや注意点などについて、わかりやすく整理していきます。

相続分譲渡とは?

自分の相続権を他の法定相続人や第三者に譲ることを、相続分譲渡と呼びます。

ここで指す相続権や相続分というは、個々の財産における共有部分とは異なる形となります。

相続分譲渡で他人に譲れるのは、あくまでの遺産分割をする場合の権利割合となりますので、この方法を使うことによって相続人の地位そのものの譲渡が可能になると言えるでしょう。

ちなみに当初は当事者だった相続人が相続分譲渡を行なった場合は、遺産分割調停においても当事者適格を失う形となります。

このようなケースに該当した場合に家事事件手続法の43条と258条では、家庭裁判所が、相続人だった人の排除をする裁判を行えると定めているようです。

《相続分譲渡と相続放棄の違い》

相続分譲渡と混同されやすい存在として、相続放棄という手続きがあります。

必要であれば相続開始から3ヶ月以内に行わなければならない相続放棄は、相続すること自体を完全放棄する手続きです。

家庭裁判所に行なった申立てが認められれば、土地や不動産、株券といったプラスの財産だけでなく、被相続人の借金や債務といったマイナスの財産を負う義務もなくなります。

しかし相続放棄には取り消しができない難点がありますので、この手続きをする際には3ヶ月以内に被相続人の抱えた財産の内容把握と、「本当に放棄をして良いのか?」という決断を行う必要があることを頭に入れておくようにしてください。

これに対して相続分譲渡の場合は、相続分を他者に譲るだけとなります。

そのためこの手続きを行なった後も相続人としての身分は持ち続ける形となりますので、もし被相続人が生前作った借金の債権者から返還請求された場合は、応じる必要が出てくると言えるでしょう。

《相続人の意思が反映されるか?否か?》

もうひとつの大きな違いは、被相続人の財産に対して手続きをする相続人の意思が反映されるかどうかというポイントです。

相続に関する権利を放棄してしまった相続放棄の場合、その後の遺産分割は他の相続人の意思によって進められる形となります。

そのため、相続放棄をした人は基本的に、被相続人の財産に対して自分の意思を反映させることができません。

これに対して権利はそのまま残る相続分譲渡には、「誰に相続財産を継いでもらうか?」といった部分で自分の意思を反映できる特徴があるのです。

こうした形で相続放棄と相続分譲渡は似て非なる存在となりますので、「被相続人の遺産を譲りたい・要らない・逃れたい」といった想いを抱えている場合は、早めに自分の方向性を決めるようにしてください。

相続分譲渡のメリット・デメリット

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相続分譲渡の手続きをする際には、下記のようなメリット・デメリットを頭に入れた上で行動を起こす必要があります。

《メリット1 相続問題からの開放が早くなること》

法的な手続きの決まっていない相続分譲渡は、被相続人が生きている間に行えます。

親兄弟との遺産分割協議が始まったら明らかに争族問題に発展するだろうと考えられる場合、被相続人の生前に相続分譲渡を行うことでトラブルに巻き込まれずに済む可能性が高まります。

また相続分譲渡には、被相続人が亡くなることでスタートする相続放棄と比べて計画的に手続きが進められるメリットもありますので、早く落ち着いた状態で相続財産との関わり方を改めたいと感じる皆さんにもおすすめ度は高いと言えそうです。

《メリット2 譲渡の対価が得られること》

相続分譲渡は、自分の指定した相手から相当額を受け取ることもできる手続きです。

譲渡先となる相手と上手く交渉を行えば、被相続人がまだ生きているうちに対価を得ることも可能となります。

しかし自分以外にも複数の相続人がいた場合は、実際に相続がスタートした段階でどのぐらいの遺産があるのかを調査しない限り、譲り受けの行える財産の時価などもわからない形となりますので、ここで受け取れる対価は概算的な方法で導き出された金額になると言えそうです。

また法的な定めのない相続分譲渡の対価は、「受け取らない」という選択もできますので、譲り渡す相手との交渉すら面倒だという場合にも自分に合った対処は可能と捉えて良いでしょう。

《デメリット1 負債に関する権利が残ってしまうこと》

前述のとおり、相続放棄とは少し考え方の異なる相続分譲渡では、被相続人に借金があった場合に、大きな注意が必要となります。

また被相続人の生前に相続分譲渡を行う場合は、その先の人生において借金が発生するかもしれない可能性を考えると、争族問題から逃れるために早々と手続きを終わらせたのに、後々債権者との間にトラブルが起こるといった状況も起こり得ると言えそうです。

《デメリット2 遺産分割協議に参加できなくなること》

相続トラブルから逃れたいといった場合、遺産分割協議に参加する必要がなくなるのは、大きなメリットだと考えられます。

しかし親の財産を分け合う兄弟が遺産分割協議で集う際には、この話し合いに参加しないことにより、形見分けなどの相談がしにくい空気が生じてしまうこともあるため注意が必要です。

また被相続人の生前のうちに相続分譲渡を行えば当然、他の相続人はネガティブな印象を持ちますので、家族とのコミュニケーションをきちんととる姿勢が必要になるケースもあると言えるでしょう。

《デメリット3 部外者への譲渡で相続問題が勃発することもある》

相続分譲渡は、家族や法定相続人以外の第三者にも行える手続きです。

しかし税務上の扱いに関する明確なルールのない相続分譲渡を第三者にした場合は、もらった側に贈与税が課税されるデメリットが生まれる可能性がでてきます。

また他の法定相続人から見て全く関係のない人に相続分譲渡を行えば、他の遺族は話し合いや対応に悩まされる状況が生じることもありますので、この手続きを進めることによって想定外の揉め事が考えられる場合は注意をしてください。

相続分譲渡の具体的な手続きの流れと注意点

法的に明確な定めのない相続分譲渡は、基本的に契約方法についても自由となります。

また極端な話をすれば、法律上のルールのないこの手続きは、口頭契約も可能であると考えられます。

しかし自分の相続分を譲渡するということは、相続分割予定の財産にそれなりのボリュームがあると考えられますので、譲り渡す相手方との間に言った・言わないのトラブルを防ぐためにも、相続分譲渡証書を作っておくのが理想となるでしょう。

《相続分譲渡のタイミングとは?》

相続分譲渡を行う上での最大の注意点は、遺産分割がスタートする前に譲受人を見つけた上で、その契約内容を他の相続人に知らせることです。

被相続人の死亡にともない遺産相続がスタートしてしまうと、相続分譲渡ではなく相続放棄で対応するしかなくなります。

また中には他の法定相続人に対して通知は不要という意見もありますが、「そんな話は聞いていない!」と感じた遺族に不信感を与えることによるトラブルが想定されることを考えると、内容証明郵便を使って相続人全員にきちんと伝えておくのが理想と言えそうです。

《相続分譲渡証書に書くべき内容とは?》

相続分譲渡証書には、下記6つ項目に関する内容を記載するのが一般的です。

・譲渡人と譲受人の氏名、住所
・被相続人名(誰の相続分を譲渡するのか?)
・全部、一部(いくら分を譲渡するのか?)
・相続分譲渡を行う条件(有償、無償など)
・契約が効力を発揮する時期
・借金、債務の扱い

相続分譲渡が行われた場合、遺産分割協議はどうなるの?

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法定相続人の誰かが相続分譲渡を行なった場合、遺産分割のイメージは下記のようになります。

《他の相続人への相続分譲渡があった時》

他の法定相続人に相続分譲渡の手続きを行うと、自分が分割する財産がその相手にスライドするイメージとなります。

例えば、被相続人が父親、配偶者の母親、子供が2人いる家庭の中で、妻が子供Aに対して相続分譲渡を行なったと仮定します。

相続分譲渡を行う前段階とも言える法定相続分については、下記のとおりになります。

・妻 → 2分の1
・子供A → 4分の1
・子供B → 4分の1

この家族の中で母親である妻が子供Aに相続分譲渡を行うと、子供Aの相続分が4分の3、子供Bの相続分が4分の1のままとなってしまうのです。

こうした形で相続分譲渡を行なった後の状況を数字で見てみると、この手続きによって生じる新たなトラブルの意味も理解しやすくなると言えるでしょう。

《第三者への相続分譲渡があった時》

これに対して法定相続人以外の第三者への相続分譲渡は、家族にとってもっと厄介な存在になります。

例えば、上記の家族の中で子供Aが内縁の妻に相続分譲渡を行うと、法定相続人からすれば全く関係がないとも言える女性が遺産分割協議に参加する可能性がでてきます。

また相続分の譲り受けをした人は、遺産を受け取る以外に不動産の移転登記や更なる譲渡もできる形となってしまいますので、こうした状況により家族にショックを与えないためにはやはり、早めに内容証明郵便を使って契約内容を知らせる必要があると言えるでしょう。

まとめ

少しでも早く相続問題から開放されたい人が使うケースの多い相続分譲渡にも、契約内容によっては他の相続人に対して違和感を与えることもあると言えそうです。

またこうした手続きを行う人が登場する家族の中には、既に遺産相続に関する何らかの問題が生じ始めている傾向もありますので、自分たちだけで解決の難しいトラブルが存在する場合は、早めに相続問題に詳しい弁護士に相談するようにしてください。

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