成年後見人の権限、費用、申立手続きの方法 まとめ

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高齢化社会の進む日本国内では、財産管理の難しいお年寄りや精神障害を抱えた人のいる家庭で、成年後見人の検討をするケースが増え始めています。

この制度を上手に利用すれば当然、争族トラブルの回避もしやすくなりますので、成年後見人の権限や費用、申し込み手続きの流れについて、その内容を早めに確認しておくことも家族にとって大事な心掛けになると言えるでしょう。

今回は、将来的に想定される相続問題の対策として成年後見人の利用を考える皆さんと一緒に、この制度の基本的な話を確認していきます。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、精神障害や認知症などによって判断能力が低下した方々が不利益を受けないために支援または保護のできる成年後見人を付けられる制度の総称です。

この仕組みの中においては、判断能力が不十分という理由で申し立てをする側を成年被後見人、契約によって身の回りの世話を行う権限を持つ側を成年後見人と呼びます。

高齢化によって認知症患者の増える現代では、こうした方々に生じる遺産相続などの問題を防ぐためにも、成年後見制度への注目が非常に高まっているようです。

成年後見制度の基本理念とは?

成年後見制度には、ノーマライゼーション、残存能力の活用、自己決定権の尊重という3つの理念があります。

この制度の主軸とも言えるノーマライゼーションには、障害を抱えた人でも地域や家庭で通常の生活ができる社会を作るといった意味があるようです。

そのため、こうした基本理念がしっかりしているこの制度利用時は、仮に成年後見人が選任された場合においても、スーパーで好きな食材を購入したり、洋服や靴を選ぶなどの日常生活に支障は起こりにくいと捉えて良いでしょう。

成年後見人になれる人・成年後見人になれない人

成年後見人になれない人、すなわち成年後見人の欠格事由の中には、下記5条件が存在しています。

・未成年者
・破産者
・家庭裁判所で免じられた法定後見人など
・成年被後見人に対して訴訟を行なった者、またその配偶者や直系血族
・行方の知れない人

この5条件に該当しなければ、親族などであっても成年被後見人になることができます。

しかし基本的には、本人の意向を踏まえて家庭裁判所が最終的に成年後見人を誰にするかを決める仕組みです。

職業後見人が就任することもある

核家族化や少子高齢化の進む今の時代は、認知症などを抱えた人のためにその親族が成年後見人になりにくい実態があります。

また、この制度ならではとも言える権限は、一般の皆さんにとって理解が難しい位置づけとなるため、弁護士・社会福祉士・司法書士といった支援のプロフェッショナルが成年後見人になるケースも増え始めているのです。

成年後見制度における2つの種類

成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度という2つの種類が存在します。

任意後見制度とは?

今現在はとても元気であっても、この先に生じるかもしれない認知症などへの不安を抱える人には、支援してくれる人と将来の約束をする任意後見制度がおすすめとなります。

任意後見制度の中には、即効型、移行型、将来型という3つのパターンがあります。

今の判断に不安がない場合は移行型、将来的に支援を受けたい人は将来型を選択する仕組みです。

これに対して今の判断能力に不安があり、なるべく早く支援を受けたい場合は、任意後見契約と同じタイミングで任意後見監督人の選任申し立てを家庭裁判所に行う、即効型が選択されます。

法定後見制度とは?

本人が認知症や精神障害などによって判断能力が不十分になったとき、法律行為や財産管理への支援として利用する種類を、法定後見制度と呼びます。

こちらについても、補助類型、補佐類型、後見類型の3つのパターンがあります。

例えば、本人となる母親が日常生活に欠かせない買い物が1人でできない場合、先程ご紹介した成年後見人が選ばれる仕組みです。

これに対して買い物は何の問題なくできる、しかし自動車購入や不動産の売却をひとりで行うことは難しいといった場合は、補佐型もしくは補助類型が選択される流れとなります。

こうした形でさまざまな種類が用意されている成年後見制度は、任意後見制度・法定後見制度どちらであっても、本人の症状や希望に合ったものを選択しやすい仕組みと言えそうです。

成年後見人の権限とは?

成年後見人の権限には、大きく分けて包括的代理権と取消権という2つの種類があります。

包括的代理権

成年後見人となった人は、委任状なしで財産や身上監護に関する法律行為を代理で行える形となります。

例えば、認知症になってしまった本人が施設入所をする場合は、成年後見人が代理人として手続きを行える仕組みです。

また財産運用に欠かせない契約更新、変更、解約についても代理権がありますので、成年後見人の権限は意外と幅広いと捉えて良いでしょう。

成年後見人に利益相反関係がある場合は注意が必要

こうした形で被後見人の財産に関わる成年後見人は、利益相反関係にない人を選ばなければなりません。

また、たくさんの遺産を持った父からなるべく多くの相続を行いたいなどの利益がある場合は、成年後見人ではなく特別代理人を選任して契約をする必要が出てくるため、注意が必要です。

他に成年後見監督人がいる場合については、監督人自身が本人の代理をすることもあります。

取消権

重度の認知症などによって悪徳業者とも言えるセールスマンと契約を交わしてしまった場合は、成年後見人がこの契約内容を取り消すことも可能です。

こうした形で成年後見人による取消が行われば、親族が知らないうちに悪徳業者の罠にはまってしまった場合についても、スムーズに対処が可能になると言えるでしょう。

取消権の権限が及ばないこともある

成年後見人の取消権には、「日常生活に関する行為以外の行為」という範囲が定められています。

例えば、認知症になってしまった被後見人がコンビニエンスストアで明らかに不要と思われる大量買いをした場合、日常生活に関する契約という判断により成年後見人でも取消権を使うことはできません。

また日常家事などについても成年後見人の仕事からは外れる形となりますので、成年後見制度とホームヘルパーなどによる支援には大きな違いがあると捉えるようにしてください。

成年後見における申し立て手続きの流れ

認知症の人も多く選択する法定後見制度の場合、下記の流れで申立て手続きを行う必要があります。

成年後見の申し立てができるのは誰?

成年後見制度の申立ては、本人、配偶者、4親等以内の親族、自治体の市町村長のいずれかが行える形となっています。

市町村長については、判断能力が不十分な本人に親族がなく、福祉の充実を図るために特に必要がある時のみ申立て可能になる仕組みです。

また前述のとおり、本人と成年後見人との間に利益相反関係がある場合は、後々の相続問題の原因になることもありますので、この申立てに向けて家族みんなで話し合いする心掛けも必要だと言えるでしょう。

成年後見の申し立てに必要なものとは?

家庭裁判所では一般的に、成年後見制度の申立てに下記書類が必要となります。

・申立書、申立書付票
・本人の住民票、戸籍謄本、診断書、登記されていないことの証明書
・成年後見人候補者の住民票

成年後見の申し立てにかかる費用とは?

成年後見制度の申立てをする際には、下記の費用を用意する必要があります。

・申立て費用の収入印紙 800円
・登記費用の収入印紙 2,600円
・切手 3,000円~5,000円程度
・鑑定費用 50,000円(必要がある時のみ)

成年後見の申立てにおける流れとは?

上記の書類と費用を用意し家庭裁判所への申立てを行うと、調査、審問、鑑定、審判の流れで「後見を開始して良いか?」のチェックが進められていきます。

最初に行う調査では、家庭裁判所の調査官が本人や親族といった関係者への問い合わせや事情を尋ねるといったことが行われます。

そして必要がある場合は、調査の後に裁判官などが成年後見開始に必要となる事情を更に審問する流れです。

本人の判断能力について更に深く把握する必要がでてきた時には、専門の医師に精神鑑定が依頼されます。

調査、審問、精神鑑定が終わると、これまでの結果を踏まえて裁判官が後見開始の審判を行う仕組みです。

それとともに成年後見人の選任が行われ、最終的に後見人や申立人に通知される形となります。

審判までの平均的な期間とは?

申立てから審判までの期間は、2ヶ月以内の終局が76.9%、4 ヶ月以内の場合は94.3%といった確率になります。

申立て時の書類に不備等がある場合は、調査などをスタートすることもできなくなりますので、必要物や費用について早めに申立て先となる家庭裁判所に確認をしておくのが理想と言えるでしょう。

また審判後には、即時抗告期間が2週間入る形となりますので、通知から即、成年後見が始められるというわけでは無さそうです。

成年後見の相談は弁護士にするのがおすすめ

成年後見制度の内容に疑問が生じていたり、誰を成年後見人にすれば良いか判断が付かない場合は、この制度や相続問題に詳しい法律事務所に相談をしてみてください。

職業後見人になることもできる弁護士のお世話になれば、利益相反関係による争族問題なども回避できるメリットが得られます。

また幅広い法律知識を持つ弁護士は、同じように職業後見人になることのできる司法書士や介護福祉士などと比べて相続問題にも強い傾向がありますので、遺産相続や遺産分割協議の際にトラブルが生じる可能性が高い場合は、まず弁護士に相談してみるのが理想と言えるでしょう。

法律事務所全般のサービスが充実する近頃では、初回相談料の割引や無料相談を行う弁護士も増えていますので、まずは電話やメールといった自分に合うツールを使って気軽に問い合わせをしてみてください。

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